「ぃよーゲロ名! 今日もゲボって来たか?」
苦くて酸っぱい入学式からほどなく――。
ゲロキャラとしての地位を確立した私は、最低最悪のあだ名をつけられ、いじられキャラに徹していた。
クソガキが……。
でも事実なので甘んじて受け入れるが……それでも、女子相手にゲロってどうなん? まじでこいつの倫理観、終わってるわ。
絶対モテない。顔がよくてもモテない。
「……ゲボってません」
「ちゃんと指奥までつっこんだか? 足りねえんじゃねえの?」
「だからうるせーって! あれは不可抗力!」
「なに、傑の顔見て気持ち悪くなったの? えぇ~傑クンかわいそ~」
語尾に星でも飛んでそうなお茶目キャラじみた発言に、殺意がとめどなくわいてくる。
高専教師の五条悟は、まじでかっけーなって思ってたのによ……なんだこれクソが。まあ15,6のガキで同年代だとこんなもんか?
これには黙して動かずだった倫理のひと、夏油傑――動く。
「悟。いつまでもそのイジりはよさないか」
「俺はおめーの名誉のためにもイジってやってんだよ? 制服新調したんだっけ? ん~、でもまだすっぱくない?」
夏油の学ランに顔を寄せて、五条が言う。
一部界隈にはキャーと騒がれそうな絵面だが、実際は、ゲボいじりしてる男とその被害者だ。
「五条ー、もうやめなよ」
そんな時に鶴の一声を上げてくれたのは、女神・家入硝子ちゃん。
……ほんと好きっ!
「次、あんたが頭からゲロシャワーふっかけられるよ」
「うえぇ~ばっち~!」
そうきたか……でもそんなお茶目なところも好きっ! 可愛いから全部オールおっけー!!
血の涙を流す私に、雪名、と夏油は穏やかな声をかける。
「もう気にしてないから。悟のことは、」
「なになに傑きゅんやっさし~。ゲボから始まる恋ってやつぅ~?」
彼の善意を踏みにじる五条の言葉に、――今度こそ私の内なるカルデラが大噴火を起こす。
「てめぇいい加減に黙っとけ、まじでゲボぶっかけんぞコラァ!」
「うわ~ゲロ女が切れた~! 逃げろ~!」
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