『あの任務』以来、傑がなんか変だって。
そんなこと、あいつに言われなくても分かっていた。
でも――大丈夫だと、思った。傑だから。あいつは俺よりも『大人』で、判断力があって、強い術師で。
いや、……言い訳だな。本当は、大丈夫じゃないかもって思った。もしかしたら、って。どこかで思っていた。しかし、『そこ』に踏み込むことができなかった。
正直、あいつの言っていることはよく分からない。――俺じゃなきゃだめって、なんなんだよ。なんであいつじゃダメなんだよ。
お前の方が、傑の欲しい言葉かけてあげられるだろ。裏で手回してんのか知らねえけど、傑と一緒にいる時間、俺より長いだろ。お前のほうが寄り添ってるだろ。なんでそのお前じゃダメなんだよ。
まあ、今。そんなこと考えても仕方がないわけで。
なんでもひとりでこなして、勝手に解決する。誰かに頼み事するのが、死ぬほどど下手くそなあいつが。泣きべそ掻きそうな顔で縋って来たんだから、そこはまあ……汲んでやるか。
でも、『ひとりにしないで』って。それどうすんの? 四六時中一緒に居ろって? そんなの無理に決まってる。じゃああいつはどうしてたんだよ。
クソ。託すんなら、なんかこう……気の利いた提案くらい、していけってーの。
なんかいきなり気ぃ遣ったりすんの、変だろ。あいつも変に気ぃつかうだろ。あーもう、俺そういうの苦手なんだけど。
まあ今日は任務が入ってないから、とりあえず傑の動向を観察して、……隙があれば声をかけて……。いや、なんて声かける? ああもう、マジで分かんねえ。
あいつもあいつで、なに考えてんだよ。
あ、席立った。このタイミングで? 分かんねえ。いつもどんなふうに喋ってたっけ? あ、やべ、行っちまう。どうしよう。雪名、なんでお前この場にいねーんだよ、って任務か。いっちょまえに一級術師やりやがって……。
「……悟、なに?」
「へ……?」
傑がこっちを振り向いて、聞いた。なにってなんだよ。こっちが何って聞きてえんだが。
「さっきからガン飛ばしてる?」
「あ、いや……」
え、俺そんな目つき悪かった? そういうわけじゃなく、……ああもうクソ! 雪名、全部お前のせいだからな!!
「……いや、つーかさ。お前最近また痩せた? 体薄くなってない? 飯食ってんの? まじでそうめん食いすぎ?」
「そうかな……? いやだから、そんなにそうめんばかり食べてないって」
「いやでも、なーんか薄くなってね? 雪名のお散歩パンチ食らったら、吹っ飛びそうだぜ」
傑は一瞬きょとんとして、目を点にした。……やっべ、外した?
「いや、あれはあれで痛いんだけど……まあ、今のお前ならそんなこと、」
「っ……ふ、ハハ……」
え、傑お前今、笑ってる? 外してなかった?
「いや、悪い。彼女にも同じことを言われたんだ。『だからもっと食え』って、いろいろ餌付けされてる」
「あ、そ……」
「だからまあ、食事に関してはぼちぼち。でもまあ、……そうかもね。そんな気はする」
「っじゃあ、もっと食え! 吐くほど食えよ!! 焼肉行くぞ、肉を食え!!」
「悟のおごりなら」
「おう! じゃあ行くぞ、今から行くぞ!!」
ホントにこれで合ってんのか……?
でもまあ、なんとなく分かったような気がする。とりあえず飯だ。腹が減ってはなんとかって言うだろ。とりあえず痩せた傑には、肉でも食わせとけ。腹が満ちれば、なんかいい感じになんだろ。
あとのことは、その場で考える。それでいいだろ。
――俺じゃなきゃ、だめらしいし。
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