「主さん、大丈夫か?」
今度はそんな声で起こされた。
目を開ける。開けたはずなのに、一枚幕を張ったようにぼやけてよく見えない。
「主さん泣いてるのか? どこか痛いのか?」
心配そうにのぞきこんできたのは、真っ赤な色彩。そしてその次には、黄色、そうしてやけに印象に残る愛染明王。
「あ……い、ぜん」
「おう、愛染国俊だ。主さん、中々起きてこないから心配で部屋入っちまったぜ。大丈夫か? 最近あんまり眠れてないんだろ? 休んだほうがいいんじゃないか?」
確か愛染は今日の近侍であった。
時間になっても起きてこない主を心配して、見に来てくれたらしい。
何故だか、愛染の触れたところが泣きたいほどに温かいような――。
審神者は腕を伸ばすと、愛染の首の後ろに手を回し、力をかけて布団の中へと引きずり込んだ。
「えっ、主さんどうした?!」
「ごめん、……暫くここにいて。あともうちょっと寝かせて」
そう言った審神者が、再び寝息を立て始めるまでそう長らくはかからなかった。
愛染は何がなんだか分からないながらも、近頃の主の不調は理解しており、仕方ないと納得している。
――何故だか、審神者は思った。愛染の側ならよく眠れると。
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