シヴァの見つめる先 - 7/12

研究中止報告書

提出先:時の政府・刀剣運用監査局
提出者:審神者[ID:■■■■■■■■]/研究主任 一期一振
提出日:XX年X月X日

【研究題目】

刀剣男士における部隊内信頼度と戦果・損耗度の関連性についての検証

【研究目的】

刀剣男士間の相互信頼が、出陣時の戦果、損耗度、及び心理的安定性に与える影響を質的・量的に評価し、最適な部隊運用の指標を確立することを目的とした。

【実施状況】

研究協力者:計十二口
実施期間:××年×月~同年×月
実施クール:全三クール予定中、第三クール第八戦にて中止
出陣総数:計38戦(第一・第二クール計20戦、第三クール18戦)

【中止理由】

第三クール第八戦において、被験個体・鶴丸国永が戦闘中に著明な心的外傷後ストレス反応(以下、PTSR)を呈した。
戦闘後も再体制不能、意識混濁、過覚醒、回避行動、同一戦場刺激への強い拒否反応が確認され、医療班及び本丸監察医により「急性心的外傷反応」ならびに「持続的外傷性ストレス障害」疑いと診断された。

当該個体の状態は研究の継続を著しく阻害するものであり、また他個体への心理的影響も無視できないことから、研究責任者(審神者)は即時中止を判断。
本丸医療班への引き継ぎと、全データの保全措置を行ったのち、本報告書をもって正式に研究中止を申請する。

【これまでの成果・観察所見(要約)】

第一クールでは、部隊内の信頼関係強化が損耗率低下および連撃発生率上昇に寄与することが示唆された。

第二クールにおいて条件を反転した結果、関係性の急変による一時的な混乱とストレス反応が確認された。

第三クールでメンバーを再編した結果、出陣前からの心理的緊張および対人摩擦が顕著となり、戦果は一定の向上を見たが、同時に複数個体に軽度の感情疲労および幻聴・動悸などの一過性症状が認められた。

鶴丸国永におけるPTSRは、これらの累積的心理的負荷が誘因となった可能性が高い。

【今後の対応方針】

被験個体・鶴丸国永は、本丸内療養棟にて経過観察中。政府付属療養施設への転送は行わず、当本丸にて責任をもって治療を継続する。

他協力個体に対しても、臨時の心理面談・休養措置を実施済み。

取得済みデータはすべて封印保管とし、当該個体の同意なく外部共有を行わない。

【研究責任者所見】

本研究の目的は、より良い戦闘環境を構築することであったが、その過程において一振りの心を傷つけた事実を重く受け止めている。
「研究成果」として報告すること自体が、当該個体の苦痛を再利用する行為であるとすら感じている。
ゆえに本報告書は、結果の提示ではなく失敗の記録として提出する。
この記録が、同様の過ちを繰り返さないための礎となることを願う。

【共同提出者所見】

研究主任として、本件の倫理的検討の不備を痛感している。
得られた数値は興味深いものである一方で、刀剣男士という存在の心理的耐久性を過信した結果であった。
科学は、命の尊厳を犠牲にして成立してはならない。
再発防止と反省をもって、以後の研究指針を再構築する。

送信中です

×

※コメントは最大10000文字、100回まで送信できます

送信中です送信しました!