まじでやらかした。まじのガチのやらかしだわこれ。
何遍も何遍も鏡を見て、目を伏せて。また鏡を見て……。いやそんな現実逃避したって全く意味がない。
「……いかつい……」
鏡のなか、ど金髪に輝く頭を見て、私は何度目か分からない絶望をした。
明後日、始業式だってのに……。
やらかしの発端は、純粋な深夜テンションだった。
なんとなく、「ヘアカラーを変えてみたいな」と思った。
どうせ高専は服装自由だし、だったらいっそのこと奇抜な色にしてみたい。年甲斐もなく、いや、ガワは十代ど真ん中だから年甲斐はある。とにかくそう思った。
しかし、結局ど派手な色(ピンクとか緑とか)は勇気が出なくて、アッシュグレイにしてみたい……という無難なところで落ち着いた。
ここで、時間帯が昼まであれば――じゃあ美容室に行こう、となっていた。しかし悪いことに、思い立ったのが深夜だった。長期休暇で就寝時間が遅くまでずれ込んだせいだ。
今すぐしたい。今すぐ変えたい。
そう思った私は深夜のドンキに駆け込み、脱色剤と染色剤を購入した。
まあこれはこれで、学生っぽくていいんじゃない?
そんなことを思って、(本当はダメだが)高専寮の自室内で、脱色開始――。
頭皮イテー、草。
なんて思いながら時間を計って放置していたのだが、ここで予期せぬ事態に遭遇する。
「……なんか、これブリーチ剤足りなくない?」
私の髪の長さでは、脱色剤が足りない――気がしたのだ。
こんなことなら、無精せずに美容室に行けばよかった……。でも短いと結べないから、なんて思っていたのが運の尽き。
一回頭を洗って、再度ドンキに走り、三個目の脱色剤を購入した。同じ店員さんだったからちょっと気まずかったが、そんなことはどうでもいい。
これらすべてが間違いだった。
二回目のブリーチを終えた私の頭は、ど金髪に染まっていた。
「やば……黄色……なにこれ……」
月の戦士かと言いたくなるような色合いに、呆然自失……。いや、まだだ。まだ慌てるような時間じゃない。
きっとカラーを入れれば、もう少しましになるはず。
そう思って、すがるような思いでカラー剤を投入したのだが、……たぶん、というか絶対、これも量が足りなかった。
結局、仕上がりはアッシュとは似ても似つかぬド金髪……。
黄色いというレベルは多少緩和されたが、それでも金髪。どこからどう見てもいかついです、ありがとうございました。
翌日、食堂で顔を合わせた硝子の爆笑をかっさらったのは、言うまでもなかった。
当然、始業式の日は五条に爆笑され、夏油に目を丸くされ、夜蛾先生には「おま……」という顔をされた。それでも特に注意されるようなことはなかったから、許されたと思いたい。
「なにその頭、月に代わってお仕置きよ~ってか?」
ツインテールにする? なんていう五条のいじりは、もう五回目。クソが……。
「随分思い切ったね。どういう心境の変化?」
笑い含みの夏油の言葉も、心に痛い。
「……深夜テンションで……」
「えー、でもいいじゃん。似合ってるよ」
硝子がそっと手を伸ばす。するっと指に手を通して、おお、と声を上げた。
「髪、綺麗だからそんな痛んでないね。キシキシしてないよ」
「……硝子ちゃん」
暖かい言葉に視線を向けると、目が合った瞬間、彼女は吹き出した。
「いやでも、ウケる。別人みたい」
「夜蛾先生もびっくりしてたね。三度見くらいしてたし」
「なんか言われた?」
「いや……。視線は感じた」
「まあ、その色は目立つね。制服が黒いし、余計に」
「不良娘~」
「白髪に言われたくねえわ」
「俺のは天然。お前のは養殖。やーい養殖。養殖不良娘~」
「るせーって! 不良じゃねえし!!」
この時ほど、術式を使っていればと思ったことはない。このド金髪の因果律を見ていたなら――あんな無茶はしなかったのに。
これが走馬灯とか、いやすぎる。
※コメントは最大10000文字、100回まで送信できます