「こりゃいい眺めだな」
上になった審神者を見上げて、ソハヤは機嫌のいい声を上げた。
ノリノリだった割に、制服が皺になったり汚れたりするのを気にかけているらしく、そんな彼の出した妥協案が、審神者が上になることだった。
「すぐそういうこと言う……」
真っ赤な顔で抗議してやるが、ソハヤはまったくどこ吹く風。それどころか、早くと催促するように、腹の上に跨がった審神者の尻を撫でた。
「っっちょ、ちょっとぉ! おさわり厳禁ですけど!」
「触らずにヤる? 禅問答かなにかか?」
「わ、私が上なんだから、私のペースでやらせてほしいという……」
「待てねえな。こんななってんだぞ」
腰をつかまれたかと思えば、ぐっとソハヤの腰が持ち上げっていやらしく動く。すり、と尻のあたりに硬いものが触れて、思わず振り返ってそちらを見た。内番ジャージの股間が立派にテントを張っているのが見えて、悲鳴が上がる。
「っな、なんで?!」
「なんでってこたねえだろ。むしろこの状況に興奮しねえ男がいたら、そいつは不能だ。それとも焦らしプレイがお好みかい?」
「ちょ、っとぉ……」
ぐりぐりと押し付けられ――自分のこんな姿で、好いた男がこうなっていると思えばなおさら――腰のあたりがもぞもぞとしてくる。ごくりと生唾を飲み下し、審神者はそろりと腰を上げて、ソハヤの股間のあたりに座りなおした。
恥ずかしくて、彼の方は向くことができない。俯いたまま、硬くなったところにすりすりと局部を押し付けると、
「待った」
腕をつかんで止められる。びくりとして慌てて上からどこうとするが、両腕を捕まえられて逃げることは出来ない。いやだったのか、なにかまずかったのか。ドキドキとしてもはや何も考えられない審神者に、ソハヤは真剣な顔つきで、言った。
「ジャージを脱がせてくれ。あと、スカート」
腰を浮かせた審神者の下で、ソハヤは器用にごそごそと動いてジャージを脱ぎ捨てる。それに倣ってスカートを脱ごうとすると、そうじゃない! とさらに駄目だしされる。なかば涙目になった審神者に、ソハヤはスカートの裾をつかんだ。めくられるのかと思い裾に手を当てて下げようとするが、
「裾を咥えて、見えるように……できるか?」
「え……」
「やってるところが見たい」
「な……なに……」
「素股……いや下着越しの素股か? なんにせよいい、最高だ、ものすごくグッとくる。いいだろ? いいよな」
そっとスカートの裾を渡されて、受け取ってしまう。赤い目を若干血走らせてまで訴えるソハヤに、NOと言える審神者ではなかった。
しぶしぶスカートの裾を咥えるが、もっさりと長くたっぷりした生地がうまい具合に隠している。いやもっと、とソハヤプロデュースのもとスカートがかき分けられ、うまい具合にその部分を見せつける仕様となった。
浮かせていた腰を恐る恐ると下ろす。クロッチの薄い生地越しに、硬く熱い怒張を感じ、腰が逃げそうになる――逃げるなとばかりにソハヤの両手が腰を捕まえ、固定する。観念して腰を揺すりはじめると、段々と腹が決まってきた。
意気地のない審神者であるが、負けん気は強い。その負けん気に火が付いた。こうなったらもはや、素股(?)だけでいかせてやる、とさえ決意した次第である。そうなればあとはもう、情け容赦なく攻め立ててやればいいのだから、指標が決まり心も軽くなった。
布越しに秘所でこすってやると、そこに熱いほどの視線が注がれているのが分かる。そこだけでなく、頭からつま先まで。全身をくまなく舐るような熱視線だ。あの、瞳が。そう思うだけで心が挫けそうに、頭の中がはじけそうになるが、目の前のモノに集中することで気を紛らわす。いよいよ硬く、熱く猛る一物は、下着の中で破裂しそうなくらいパンパンに膨らんでいた。
「っ……上手だな。元カレともこんなことやってたのか?」
吐息交じりの色っぽい声に、一瞬まともに受け取りそうになる。しかしその面にどこまでも面白がる色があって、挑発されているだけと気づいてぐっとこらえた。
「かもね」
そっけなく返す。
「へえ」
そんな声が返ってきたかと思えば、ふらりと上体が揺らいで浮遊感に襲われる。ソハヤが腰を上げたのだった。腰を上げるよう言われて、素直にその通りにする。あ、と思ったときには遅い。ぬち、と粘質な音を立ててソハヤの下着が取り払われた。
ぴとりと押し付けられた、生の感触。熱く、少し湿って――思わず息をのむ。
「なに見とれてんだよ」
ぐ、とさらに押し付けられ、布越しにその形を感じる。ソハヤが催促するように腰をゆすると、亀頭の出っ張りに秘豆がこすれて鼻にかかった声が漏れた。思わず手で口をふさぐ。そろりと盗み見ると目が合って、ソハヤはどこまでも意地の悪い笑みを浮かべていた。
「こんなもんじゃねえだろ? 元カレの鍛え方が足りねえな」
「っや……あ、ま、待って……」
「ほれほれ、もっと腰振れよ。こんなんじゃいつまで経ってもイケねえぞ」
腰をゆすられると、性器同士がこすれあい――下着の中で、ぐちゅりと湿った音が鳴った。濡れている。気づかれたくない。はっとしてソハヤを窺い見ると、それがはかない願望だったと知れる。当然と言えば当然だ、刀剣男士は人間よりもはるかに身体能力に優れているのだから。
「そうそう。濡れ濡れで滑りもよくなってんだから、やりやすくなったろ? ははっ……どっちが出したもんか分かりゃしねえ」
ぐちっぐちっぬちっ。濡れて張り付いた布越しに、よりはっきりと形を感じる。腹の底が、女の器官が、うずく。それが欲しいと哀願して、迎え入れる準備をしきりと進めてくる。
「パンツ、前までしみてるぜ」
軽く頭を起こして見つめるソハヤが、そんなことを漏らした。咄嗟に恥ずかしくて腰を上げかけ――腰をつかんで止められる。ごそごそとソハヤの手が足の付け根を探り、にゅるにゅるとつるつるの先端が押し当てられた。
「えっ、あの、ソハヤ?」
「いいから、いいから」
「でもっ、それ、ちょっ……え?!」
素っ頓狂な声が上がったのは、下着の中に一物が潜り込んできたから。ぐちぐちと性器同士がこすれあい、一層感じ入る。
「ちょっと潤いがたりねえか?」
軽い声とともに、ひやりとした感触を感じて腰が浮きかけた。びゅる、と下品な音を立てて二人の間に流し込まれたのは、まがうことなきローションだった。一体どこに隠し持っていたのか。そんな疑問を持つよりも先に、ソハヤが腰をゆすらせるものだから、何もかも吹っ飛んだ。
「っと……これは、かなりやばいな」
「やっ……だめ、入っちゃう……」
「入らねえように、頑張って腰動かしてくれよ」
丸投げされて、ぺちんと尻を叩かれる。それでもっと濡れた気がする。しかし、たたかれて喜ぶ趣味など持ち合わせがないはずで。そんな思いを払拭するように、ただもうさっさと終わらせたい一心で、懸命に腰を振った。
もはや、ソハヤに一矢報いてやりたいなんて思いはとっくに消え失せていた。
「っあー……ナマは、やべえな……」
とろとろに濡れた陰唇が、ぴっとりとソハヤの陰茎を包み込んでいる。動くたびにそこがこすれて、ぬちゅぬちゅと淫蕩な水音を奏でる。ほぐしてもいないのにすでに秘裂は綻んで、亀頭が通り過ぎるたびに物欲しげにうずく。ほしい、ほしい、ほしい。逸る気持ちに呼応するように、心臓も狂ったように早鐘を打った。
「はぁっ……」
熱い吐息がこぼれる。口を押えていなければ、きっとひっきりなしにだらしない声が出ているはずだ。唇を噛んで、息を殺して、ソハヤの一物をしごく、しごく、しごく。
「っと、待った……!」
ストップがかかったと思えば、下着の中からソハヤが出て行った。ソハヤの手が左側へ伸びる。一体何事だと彼の恥骨の上くらいに腰を下ろして見守っていると、その手がコンドームに触れた。――そう、すべて準備万端に用意していたのだ。
※ちなみにコンドーム装着は挿入前から行っていなければならないが――フィクションなので細かいことは気にせずに読んでいただきたい。※
べり、とビニルが破られ中身が取り出され、迅速に装着される。その様をつぶさに見ていた審神者と、装着し終わったソハヤと視線がかち合う。欲情しきった真紅が細められ、より獰猛な表情になる。
「お待たせ♡」
「ぁうっ」
ぬりゅん、と再び下着の中にソハヤが侵入してきた。と思えば、最初から照準は蜜孔に定められていて、迷いもためらいもなく貫かれる。ずん、と奥まで突き刺さったもの。自重でずぶずぶと奥まで咥えこみ、その形をナカでつぶさに感じることができた。この世で一等愛おしい男のそれを、受け入れる喜び。内臓を押し上げるような苦しさと、息が詰まりそうなほどの窮屈さ、しかしそれ以上に耐えようもないほどの愛しさで、胸が張り裂けそうになる。
「っ……あぁ、……ソハヤ、すきっ……」
か細い声で審神者が啼くと、下から突き上げるような衝撃に見舞われ、目の前に星が散った。
瞬間、がばりとソハヤが上体を起こす。たちまち、彼の胴をまたぐようにして抱きかかえられる体勢となった。抱きしめられ、挿入がより深くなる。咄嗟に声が出ない。口をつぐんで飲み込んでいると、そんな唇を求めるようにひとつ甘噛みされる。
息継ぎで口を開くと、目の前の唇がぱかりと開き、舌が突き出される。意図は組んで控えめに舌を出すと、ぬるりと絡めとられた。まるで互いの唾液を塗り込めるように味わい、形を確かめ合い、――最後にはじゅうっと舌を吸われて酸欠になる。ぼんやりとした頭にはなんの考えも浮かばないが、離れたくなくて、愛おしくて、狂おしくて、しがみつくしかできなかった。
突き上げるような律動が、いよいよ激しくなる。いつもは焦らして、焦らして、焦らして――苛め抜くように執拗なほどゆったりした動作から始まるソハヤにしては、珍しい。しかしその余裕のなさも、いとしくて。
しっとりと汗ばんだ肩口に鼻先を押し付けると、同じボディソープの匂いに交じって、濃い雄の香りがした。たったそれだけのことで、子宮がぎゅっとうずいて中が収縮する。
「っあ……」
漏れた声は、ソハヤのもの。ひときわ律動が速く激しくなり、歯を食いしばる仕草とともに、――果てた。
呼吸が整うまでのつかの間、審神者は体を預けながらぼんやりとした。なんの考えもなくぼーっとしていると、口づけを求められて応じる。むさぼるようなキスに脳髄までとろかされていると、中の一物が再び硬度を取り戻してきた。それと同時に、一旦それが引き抜かれる。
そのまま、布団の上にやんわりと寝かされ、その上からソハヤが覆いかぶさってきた。
「まだまだあるからな」
ごそごそと動く手元で、びり、と再びビニルを破く音が。――睦み合いは、暗くなるまで続いた。
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