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03:本丸、始動

 しばらくの待機期間を経たのち、いよいよその時がやってきた。 たまりにたまった資源を、審神者は腕組して見下ろし、満足げにうなずく。――これまで長かった。 こんのすけに「鍛刀されないのですか?」とか「出陣は?」などとせっつかれ、挙句の果てには…

02:審神者と初期刀、準備期間

 執務室に呼び出された陸奥守は、物珍しそう室内を見回しながら、すすめられるままに着座した。「ここだけ洋間のようになっとるんじゃのー」 どこか楽しげに一人がけソファに座った陸奥守をよそに、審神者はどこか緊張した面持ちで、その向かい側に腰を落ち…

01:審神者と初期刀

 役人の伝手を頼って弟子入りした本丸で、熱血スパルタ師匠にみっちりとしごかれること三年。「あんたはこの、、アタシ直々の――それも数少ない弟子のひとりなんだからね。幹部候補生学校(おんしつ)でぬるま湯につかっていた連中どもとは、鍛え方が違うん…

00:はじまり

 いつの世にも、どこの世界にも。無責任な親というのは存在する。 この場合彼女の両親――特に母親がそうで。当初の取り決めでは双子の姉は父が、妹は母が引き取って養育することになっていたのだが、「子どもっていろいろ大変なんでしょ? やっぱりわたし…

バレンタイン

 柄にもないことをしようと思ったのは、どうしようもなく浮かれていたから、なんだと思う。 どうしようもなく浮かれて、頭がくるくるぱーになって、脳みそがとろけて、お花畑になって、そういうわけでいそいそとお菓子作りをしてみようと思い立ったのが、十…